恐竜を滅ぼした隕石衝突説(アルバレス仮説)はどう真実に辿り着いたか。事の発端からわかりやすく解説

今でこそ恐竜は隕石の落下により絶滅したという事が定説となっています。
ですがこの隕石衝突説は世間に定着するまで10年という期間を要しました。

また、始めは世界各国に生息する恐竜が絶滅するほどの隕石が地球に落下したなんて科学者たちにも全く信じられていなかったのです。

ではなぜ隕石衝突説が定着したのでしょうか。

本記事では、隕石衝突説が世界に認められるまでの過程を記していきたいと思います。

 

はじめはだれにも信じられることはなかった隕石衝突説

時々小さな隕石が地球に降ってくることはありますよね。

ただし、地球が危機に直面するほど大きな隕石が降ってきたことは、人間が生活し始めた中で一度もないのです。
人間は目にしたこと以外を簡単に信じることができません。

ですから、隕石衝突説が初めて出た時には誰1人と信じる人がいなかったのです。
隕石衝突説を唱えた数人の研究者たち以外は。

隕石によって恐竜が滅びたという説を立証するにあたり数々の困難を乗り越えていかなければならなかったのです。

 

隕石衝突説が生まれたきっかけ

KT境界線で見つかる化石の異変

地層に眠る化石をたどることにより、時代をさかのぼり過去の生態を知ることができます。

地層というのは、下の方から順番に年代が古く、上の方にかかるにつれて年代が新しくなります。

当然ですよね。

チリも積もれば山となるというように、地層もどんどん積み重なっていくのですから。
そして、地層に眠る化石たちは、まんべんなく地層に散らばっているのです。

ポイント
大きな化石はなかなか発見されませんが、すごく小さなプランクトンの化石なら、どの地層からも発見されます。

場所はスペインのカラバカという町。
ここでオランダ出身のヤン・スミットという古生物学者が地層の研究を行っていました。

さきほども説明したように、通常の地層であれば、下から順にまんべんなく化石が散らばっているはず。

ところが、カラバカの地層では通常ではありえない地層をしていたのです。

それは、地層のある境目(白亜紀末期)を中心にぴたりと化石がでなくなったのです。
これは非常に珍しいこと。
地層学では、進化はゆっくりしていくと信じられています。

ですから、生物が生息していれば、化石が順に積み重なっていくはず。
それが全くないのです。

これは、ある時を境に急激に生物が滅びたという事しか考えられません。

化石が急になくなっている境界の事を「KT境界」と呼びます。

KT境界がスペインのカラバカだけにあれば、研究はさほど進まなかったことでしょう。
ただし、KT境界は世界各地で見つかることになっていくのです。

 

アルバレス親子の研究とイリジウムの発見

場所はイタリアのグッビオ。
同じころ、この地域ではたくさんのKT境界が発見されていました。

ウォルター・アルバレスという地質学者もKT境界を発見し、謎を解き明かそうとしていたのです。

ただしウォルター・アルバレスは初めからKT境界に興味を持っていたわけではなく、アペニン山脈の地層を調べる際たまたまKT境界線を発見。
これが1970年代の話。

ウォルター・アルバレスはKT境界から何の化石も発見されないという事を不思議に思い、父である。ルイス・アルバレスに相談。
しかしながら、父ルイス・アルバレスは物理学者でだったため、地層に全く興味がありませんでした。

メモ
父ルイス・アルバレスは川端康成と同時にノーベル賞を受賞したことがある物理学者です。
かなりのアイデアマンだったと言われています。

息子ウォルター・アルバレスは地層に全く興味がない父ルイスアルバレスの強力を得るため必死に説得しました。
その結果、父ルイスアルバレスは興味を持ち、協力をする事にしたのです。

この協力を得たというのが大正解。

アイデアマンであったルイスアルバレスは今までの地層学にはない、斬新な研究を試みたのです。

さきほど、地層で生物の進化を調べるには化石を調査し、その進化の過程を追っていくと説明しました。
ただし、KT境界線より上には化石がないため、調べることができません。

そこでルイスアルバレスの斬新な意見。
その内容は「化石ではなく、常に宇宙から微量に降り注ぐイリジウムの濃度を調べたらどうか」というもの。

なぜ、KT境界には化石が何もないのか。
ここには急激な地球の環境の変化があったのではないのか。

という仮説を立証するために、イリジウムの濃度を調べるということは非常に効果的なのでした。

地層はチリやプランクトンのから、面倒などにより形成されています。
イリジウムも宇宙から常に一定の量が降り注いでいますので、地層にはイリジウムも一定量含まれているのです。
しかし、地球に急激な環境の変化が起きたのであればプランクトンも同様に減ります。
そうなると相対的にイリジウムの濃度が上昇する結果となるのです。

プランクトンの化石で年代を超えない分、イリジウムの濃度で何とか環境の変化を追えるのではないかと父ルイスアルバレスは考えたのです。

この研究は、アルバレス親子以外の強力も必要でした。
ローレンス・バークレー国立研究所にて、父ルイスの同僚が世界トップクラスの微量元素分析の専門家であったため、この研究に協力してくれることになりました。

1978年、この時代では最新鋭の研究機器を使い、地層のイリジウム濃度を研究。

その結果は、KT境界のイリジウム濃度は周辺の濃度に比べ30倍の濃度という研究結果が出たのです。
これは、異常値。
KT境界のイリジウム濃度は数百万年分が凝縮されていたのです。

ではこの大量のイリジウムはどこから来たのでしょうか。

星が寿命を迎えると超新星爆発と言ってイリジウムとプルトニウムを放出しながら爆発します。
父ルイスは初めにそう考えましたが、肝心のプルトニウムがKT境界から明日検出されなかったので超新星爆発説は否定。

次に考えたのが小惑星(地球に衝突すると隕石呼ばれる)です。
これが今で言う隕石衝突説。
小惑星が地球にぶつかると、イリジウムが世界各国に降り注ぎます。
そして、ルイスは隕石の大きさを計算。
結果は直径10km。

他にも様々な仮説が立てられましたが、やはり矛盾が発生してしまいます。
ですが、地球に隕石がぶつかったという説だけは矛盾が発生しなかったのです。

そのことから、アルバレスはコレを論文にし、世界中に発表しました。

これが1980年に発表されたアルバレス仮説(隕石衝突説)です。

 

アルバレス仮説(隕石衝突説)の誕生

アルバレス仮説とは

アルバレス仮説とは、恐竜が絶滅した理由は隕石落下によるものと考えられたもの。

アルバレス仮説のシナリオは、直径10km の隕石が地球に衝突。
衝撃で大量のチリが大気中に放出されます。

この大量の地理は大気中を覆い太陽光を遮ります。
すると植物は光合成ができなくなり食べ物は失われ、地球の気温は下がり恐竜は絶滅する。

というものでした。

ただしこの論文が発表されても、この説が定着するにはまだまだ先。

その理由は、研究者たちが信じてくれなかったからです。

だが天文学者たちは信じてくれない!

そんなことが起こるわけない!と科学者

ルイスアルバレスが提唱した隕石衝突説は、簡単に受け入れられるものではありませんでした。

当然ですが巨大な隕石が落下してきたの誰も見たことはありません。
知識のない一般人ならまだしも、根拠がなければ全く信用しない研究者を信用させるには困難を極めました。

この時点では、隕石衝突説を支持するよりも否定派の方が多かったのは事実。

しかし、ここから実は急展開を迎えます。

過剰なイリジウムがあるKT境界が世界各地で発見

ルイスアルバレスが提唱したアルバレス仮説を強烈に指示したのが、初めのほうに出てきた古生物学者のヤン・スミット。

ヤン・スミットはKT境界について調べに調べ、ある事にたどり着きました。
それは隕石が衝突すると「衝撃で高温の岩石が飛び散る」ということに気づいたのです。

その事実を踏まえKT境界を改めて調査すると、という一旦溶けた岩が急に冷やされた模様のある「スフェルール」を発見。

これは世界中のKT境界から高濃度のイリジウムとスフェルールから発見されています。
このことを踏まえると、やはり隕石が落ち「衝撃で高温の岩石が飛び散った」としか考えられないのです。

絶滅の原因は「火山説」へと

この事実を踏まえても、やはり他の研究者は隕石というものを実際に見たことはないので、アルバレス仮説を認めたくないもの。

そこで、持ち出された説が火山によって恐竜が消滅したという説。

この火山説を後押ししたのがインドのデカン高原での火山の噴火。
運が悪いことに、この火山は恐竜が絶滅したと同時期に噴火していたのです。

これも相まって、火山説は加速していきました。

 

肝心のクレーターが見つからない

隕石衝突説(アルバレス仮説)は、ここまで証拠が出揃っていたにもかかわらず、ある決定的なものが足りていないのでした。

それは隕石が落ちた場所にできるはずのクレーター。

これだけはどうしても見つからなかったのです。

アルバレス仮説が出た時代のに存在したクレーターは約100個。

恐竜を絶滅させた隕石の直径は約10km。

存在するクレーター約100個のうちどのクレーターにも形が当てはまらず、なかなかアルバレス仮説を立証する事ができずにいたのです。

 

アメリカのKT境界にて

カルガリー大学のアラン・ヒルデブランドが、アメリカのKT境界を調べていると津波の痕跡を発見。

隕石は陸地に落ちるばかりではありません。

海にだって落ちることがあるのです。

アラン・ヒルデブランドはこの津波の痕跡から、様々な隕石の衝突地点を探します。
そして、アメリカの次に訪れた場所はカリブのハイチ。

カリブを調査後、浮かび上がったのが、カリブ湾とメキシコ湾に衝突地点を絞ることができたのです。

 

アルバレス仮説(隕石衝突説)は急激に真実へと近づく

メキシコユカタン半島の油田開発にて偶然発見されたクレーター

1970年代、資源探査専門家グレン・ペンフィールドがに油田探しにメキシコユカタン半島に訪れていました。

油田探しの方法は航空機用磁気センサーを用いたもの。
飛行機に搭載した磁気センサーで磁気を帯びた岩石を探します。

そうする事により海底の構造を推定する事ができるのです。

グレン・ペンフィールドが毎日調査を重ねていると、沖には直径180Kmの半円形の海底構造を発見。

この構造と、すでに1950年代に調べられていた陸地の部分の構造とつなぎ合わせると綺麗な円ができたのです。

そうです。
お察しの通り、これが隕石が落ちたクレーターです。

 

これは火山説を否定する結果につながる

では、さきほども出てきた火山ではないのか。と考える方もいるかもしれません。
しかし火山は180kmの大きな円にならないのです。

この時点で、アルバレスとグレン・ペンフィールドにつながりはない。

 

真実へと違づいたものの…。

公にされることはなかった

グレン・ペンフィールドが海底に眠るクレーターを発見したものの、これが公になることはありませんでした。

その理由はグレン・ペンフィールドはたまたまクレーターを発見しただけであり、本当の業務は油田探査。

それに加え、油田探査の依頼主はメキシコ石油公社(PEMEX)であったため、業務内容は企業秘密とされており、この情報ですら公に出すことは禁じられていたため、このクレーターの情報を世に出すことはできなかったのです。

この時点では、アルバレスと面識がなかったのですが、資源探査専門家グレン・ペンフィールドはアルバレスにこのクレーターの存在を伝えました。

ですが、学者でもない石油探査者の言う事をアルバレスは一切信じません。

それから、グレン・ペンフィールドが発見したクレーターは研究者たちの目に触れることは今後10年なかったのです…。

 

ただ、クレーターの事実は1度だけ新聞に掲載

1990年3月。その時は突然やってきました。

カルガリー大学のアラン・ヒルデブランドから資源探査専門家グレン・ペンフィールドに電話があったのです。

この2人は面識がありませんでしたが、なぜ電話をする事ができたのか。

それは、メキシコ石油公社の許可を得て一度だけクレーターの存在を新聞に掲載したことがあったのです。

 

再度クレーター付近を調査、「衝撃石英」を発見

クレーター付近は油田探査により井戸を掘ったことがありました。

そしてその井戸の中の土から「衝撃石英」を発見したのです。

衝撃石英とは?

隕石衝突の際の激しい衝撃圧力下であまり高温でない状態で、石英の結晶構造は、結晶の中に面に沿って変形する。これらの面(偏光顕微鏡下で線として認められる)は、planar deformation features (PDF) と呼ばれ、特徴的な縞模様が観察される。

出典:ウィキペディア(Wikipedia)

これが決定的な隕石が地球に衝突した決定的な証拠となりました。

 

クレーターがあることが根拠づけられる

の発見により、クレーターの存在が明らかになりました。

そのクレーターがある場所は今では漁村となっています。

この漁村の名前はチクシュルーブ村。

その村の名前をとり、隕石が落下したクレーターの後は、チクシュルーブクレーターと名前が付けられました。

 

隕石衝突説が信用されるまで10年

チクシュルーブクレーターが発見されたことにより、アルバレス仮説はようやく世間に認められました。

アルバレスのイリジウム発見から約10年。

隕石が衝突したとあるアルバレス仮説が立証されるまで10年の月日を必要としたのです。

全ての根拠が出そろい、恐竜が絶滅したのは隕石の落下によるものであるという事が定説になりました。

 

決定的な原因はいまだ研究中

隕石が地球に落ちてきたというのはクレーターにより結論付けられました。

ただし隕石落下による衝撃で恐竜が絶滅したのか。
また、隕石落下により火山活動が活発化したことにより恐竜が絶滅したのか。

どちらが恐竜に決定的なダメージを与えたのかについてはいまだ議論の余地あり。

というのも、2015年最新鋭の探査機器により隕石衝突と同時期に起きたインドのデカン高原を再度調査したところ、火山噴火により溶岩が急激に広がっていたという事がわかったからです。

これにより、隕石が落ちてきたのだけれども、絶滅した原因は火山であるという研究者も今なお多くいます。

決定的な絶滅原因については、結論に至ってないのも事実。

初めてクレーターを発見した時は油田探査機。

アルバレス仮説が認められた現在は、隕石衝突の調査用に最新機器も開発されています。

今後新たな発見があるに違いありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です